eクラーキングセミナー

★eクラーキングセミナー 第37回★ 2015/8/4
今回は猫の情報の「変更」手続きについてです。

リングクラークをしていると、出陳者からエントリーした猫の性別や年齢などの「変更を求められるケースがあります。
さて、次の事柄についてはどのように対処すればいいでしょうか?

・猫の性別の「変更」
・猫の年齢の「変更」
・猫の生年月日の「変更」
・TICAナンバーの「変更」
・猫の名前の「変更」
・猫のブリーダー名の「変更」
・猫の父猫や母猫の名前の「変更」

「Clerking Manual」にはこう書いてあります。
「54.2.3.5.1.1 Changes in sex, age or birth date need to be marked clearly in the catalog and told to the Judge. The owner informs the Master Clerk.」

「54.2.3.5.1.2 Changes in registration number, spelling of cat's name, name of the breeder or owner, name of the sire or dam need only be made in the Master Catalog. The owner informs the Master Clerk」

猫の性別、猫の年齢、猫の生年月日の「変更」はカタログに記録するとともに、ジャッジに伝える。
TICAナンバー、猫の名前、猫のブリーダー名、猫の父猫や母猫の名前の「変更」はマスターカタログに記入するだけでいい。
そして、これら上記の全ての変更はそれぞれのオーナーがマスタークラークに伝えると定めています。

★eクラーキングセミナー 第36回★ 2015/7/28
猫の「カラー」と「ディビジョン」についてです。
さて、次の問題にさっと答えられるでしょうか?

次のカラーの6頭のトンキニーズ(TO)が出陳されました。この6頭はいくつの「ディビジョン」に分かれるでしょう?
・シールセピア
・ライラックセピア
・ブルーミンク
・チョコレートミンク
・ブルーポイント
・ライラックポイント

もし、「こんな難しい問題は出来ない」と思うなら、「Clerking Manual」を読んでいない証拠です。
なぜなら、「Clerking Manual」の22ページに、「例」としてしっかり書かれているからです。

「Example: The following Tonkinese are entered in a show: seal sepia, lilac sepia, blue mink, chocolate mink, blue point and lilac point. The seal sepia and the lilac sepia are sepia solid; the blue mink and chocolate mink are mink solid; the blue point and lilac point are pointed solid. Therefore, there are three different competitive divisions」

★eクラーキングセミナー 第35回★ 2015/7/21
ジャッジから手渡される「イエロースリップ」についてです。

意外にベテランのクラークでもたまに起こるのが、「イエロースリップ」の貰い忘れです。マスタークラークから指摘されて気付くケースが多いわけですが、やはりこうした事はないに越したことはありません。「Clerking Manual」でもその点をしっかり注意しています。

「54.2.6.2」の後半部分に「It is important that the clerk gets all of the Judge's sheets. If sheets are missing the clerk has not done his job properly」と記載されています。
「properly」は「適切に、しっかりと、正確に」という意味がありますから、「イエロースリップ」の貰い忘れがあることは「クラークとしての仕事をしっかりとしていないことである」と指摘しています。

★eクラーキングセミナー 第34回★ 2015/7/6
「eクラーキングセミナー」の第34回はクラークの”スキル”についてです。

一般の事務において、「早くて雑な仕事」も「正確だけど遅い仕事」も”NG”であるのと同様に、クラークの仕事も「早くて正確」が求められまています。

「Clerking Manual」でもその点がはっきり書かれています。

「54.2.6.2 The Judge's sheets should be checked against the clerk's catalog markings as soon as possible so that any discrepancies can be discovered immediately and any errors corrected right away」

ここで気に留めておきたいのは「as soon as possible」「immediately」「right away」です。
「discrepancies」は「矛盾や食い違い」という意味ですから、「どんな矛盾や食い違いも即座に発見し、いかなるミスも直ちに訂正されるために、できるだけ素早くジャッジシートとカタログを照らし合わせてチェックしなければならない」と書いてあります。

クラークはジャッジの審査スピードに合わせて仕事をする必要がありますから、審査が早いジャッジに付いた場合は”ギア”を一段もも二段も上げなければならないことは言うまでもありません。

★eクラーキングセミナー 第33回★ 2015/6/29
ある猫種のカラークラスにおいて5頭が審査されましたが、ジャッジがカラーリボンを付けたのは「青」「赤」「黄」「緑」の4位まででした。クラークは残る1頭について、ジャッジが「白」リボンを付け忘れたと思い、ジャッジに代って「白」リボンを付けました。

次のような場合はどうでしょう?
やはりある猫種のカラークラスにおいて5頭が審査されましたが、ジャッジがカラーリボンを付けたのは「赤」「黄」「緑」「白」だけでした。クラークは残る1頭はBOCだと思い、ジャッジに代って「青リボンを付けました。

この2つのケースの場合、クラークはジャッジの補佐をしたことになるでしょうか?

「Clerking Manual」の「54.2.4.3.1」に、大文字でこう書いて書いてあります。
「UNDER NO CIRCUMSTANCES MAY THE CLERK HANG A RIBBON. ONLY THE JUDGE MAY DO THIS」訳せばこうなります。「いかなる状況においても、クラークはリボンをかけることは出来ない。ジャッジだけがリボンをかけることが出来る」

★eクラーキングセミナー 第32回★ 2015/6/19
「eクラーキングセミナー」の第32回はショーが始まってから起こる様々な事柄に関してのことを取り上げます。

さて、ある猫種のカラークラスにおいて5頭が審査されましたが、ジャッジがカラーリボンを付けたのは「青」「赤」「黄」の3位まででした。クラークは残る2頭について、5位以下ということでカタログには「−」を書き込めばいいでしょうか?

次のような場合はどうでしょうか?
やはりある猫種のカラークラスにおいて5頭が審査されましたが、ジャッジがカラーリボンを付けたのは「黄」「緑」「白」で、「黒」と「赤」のBOC、2nd BOCは付けませんでした。クラークは残る2頭について、やはり「−」を書き込めばいいでしょうか?

「Clerking Manual」の「54.2.4.3.1」にこうした場合のケースの対応が記載されています。

「If there are five or fewer cats in a color class and one or more of them is not awarded a ribbon, or a first or second place ribbon is not awarded at all, you should discreetly check with the Judge to verify if this is intentional」

大切なのは後半部分の「you should discreetly check with the Judge to verify if this is intentional」
「discreetly」は「慎重に」という意味の副詞、「intentional」は「意図的な」「故意に」という意味の形容詞です。

つまり、クラークはジャッジが意図的に(あるいは故意に)そうしたのかどうかを慎重にチェックすべきであると規定しています。

★eクラーキングセミナー 第31回★ 2015/6/15
「eクラーキングセミナー」の第31回も「スチュワード」に関連した事柄を続けます。

さて、ジャッジから受け取ったイエロースリップをマスタークラークまで届けるのに、スチュアードに頼んでも良いのでしょうか?仮に頼んでも良い場合、それは大人のスチュアードに限られるでしょうか?

その答えは「Clerking Manual」の「54.1.10.4」に書いてあります。
「Stewards, especially children, can be used in other ways besides cleaning cages and sorting numbers. They can be used as runners for taking Judge's slips to the Master Clerk. Take them on the trip once so that they know where to go and where to put the slips」

スチュアードが子供の場合でも「They can be used as runners for taking Judge's slips to the Master Clerk」と書いてありますから、問題ないということになります。

★eクラーキングセミナー 第30回★ 2015/6/9
「eクラーキングセミナー」の第31回も「スチュワード」に関連した事柄を学びます。
さて、スチュアードは子供でも構わないのでしょうか?もし、大人でなくてもいいとしたら、小学生以上とか、中学生以上とか、高校生以上とか、決まりがあるでしょうか?

「Clerking Manual」を読む限り、大人でなくてもいいことになっています。そして、特に年齢制限は設けておらず、「child」あるいは「children」と書いてあります。

ただ、ここで注目したいのはスチュアードを座らせる場所について、子供の場合と大人の場合で違う方法を提示している点です。

「54.1.10.3 If the ring steward is a child, it is wise to have the steward sit on the same side of the judging ring as the clerk. However, if the steward is an adult, sitting on the opposite side of the ring from the clerk can help keep spectators out of the ring」

スチュアードが子供の場合はリングクラークと同じ側、大人なら反対側に座らせることを推奨しています。

★eクラーキングセミナー 第29回★ 2015/6/3
「eクラーキングセミナー」の第29回は「スチュワード」に関連した事柄を確認したいと思います。

人手不足のときなど、スチュアードを用意できないショーもありますが、これはショールール違反になるのでしょうか?スチュアードがいないリングの担当を依頼されたクラークは「スチュアードの仕事まで出来ません」と言うことができるでしょうか?

結論から言えば、ショールール違反ではありませんし、リングクラークは「スチュアードの仕事まで出来ません」ということはできません。

こんなケースも想定し、「Clerking Manual」は次のように定めています。
「54.1.10.5 In the event there are no stewards, the clerk must assume the responsibility of cleaning the cages」

「assume」は「(義務などを)引き受ける」「(役割などを)担う」「(責任などを)負う」と言う動詞です。つまり、スチュアードがいない場合、リングクラークはケージを清掃する責任を負う(義務を引き受ける)ことになるのです。

★eクラーキングセミナー 第28回★ 2015/5/28
「eクラーキングセミナー」の第28回は、ちょっと読み飛ばしがちな「Clerking Manual」の項目についてです。

クラークについても「Dress Code」があるのをご存知でしょうか?

「51.7.2 Dress Code. Clerks should dress appropriately. They are in highly visible positions, and appropriate attire will complement the show committee's efforts to provide exhibitors with a quality show」

もちろん、特に何を着なければならないと規定しているわけではありませんが、クラークは「in highly visible positions(とても目立つ場所に)」いることは確かですから、「質の高いショー」を開催するために、それに相応しい身なりを求められることもあるでしょう。

以下は私の個人的な意見になりますが、さらに付け加えるなら、「音を立てにくい服や靴」「どこかや何かに引っかかりにくい服や躓きにくい靴」を身につけるべきだと感じています。

柔軟に身動きしやすい服装であるのはもちろんですが、余り普段着過ぎても困りますし、逆にピシっと華麗に決めるのはいいですが、身動きしにくいのも困ります。バランス感覚が必要になるということなのかもしれません。

★eクラーキングセミナー 第27回★ 2015/5/22
「eクラーキングセミナー」の第27回は、「Clerking Manual」の「51.1 Purpose(目的)」を再確認したいと思います。

「The purpose of The International Cat Association's Clerking Program is to provide training to all interested and qualified individuals which will result in confident, competent, efficient and experienced licensed clerks」の後半部分に焦点を当てます。

TICAは、「Clerking Program」を通してどんなクラーク人材を育成しようとしているのでしょうか?
その答えが「confident, competent, efficient and experienced licensed clerks」です。 「confident(信頼できる)」「efficient(有能な)」「experienced(経験豊富で熟達した)」クラークの育成を目的としています。

敢えて、ひとつの英単語の解説を後回しにしましたが、最も重要なのは「competent」かもしれません。
「efficient」と同様に「有能な」という意味もありますが、「要求に適う」「うってつけ」という意味も含まれています。その上で、「その力量があり、有能で優秀である」ということを意味します。

こうして考えれば、口が裂けてもクラークが”メッセンジャーボーイ”や”メールボーイ”などとは言えないことが理解できるかと思います。

★eクラーキングセミナー 第26回★ 2015/5/18
「eクラーキングセミナー」の第26回は、こうしてセミナーを催す私たち自身もまた、しっかり自戒しておかねばならないかもしれません。

「Clerking Manual」の「51.1 Purpose(目的)」のところにこう書いてあります。

「The purpose of The International Cat Association's Clerking Program is to provide training to all interested and qualified individuals which will result in confident, competent, efficient and experienced licensed clerks」

私が敢えて取り上げた理由は、そこに「all interested and qualified individuals」と書いてあるからです。「all interested individuals」ではなく、「qualified」も入っている点を見落としてはならないと思っています。

単に、クラークに「興味のある人」「関心のある人」ではだめなのです。「qualified」。つまり、関心・興味もあって、かつ、「適任であり、資質・能力のある」人でなければならないのです。

ですから、、「適任であり、資質・能力のある」メンバーを見付け出し、クラークに興味を持ってもらう、あるいは関心を持ってもらう努力も大切だといえるかもしれません。

★eクラーキングセミナー 第25回★ 2015/5/11
「eクラーキングセミナー」の第25回も「INTRODUCTION」の中からクラークの基本を学びたいと思います。

リングクラークをしていると、時として出陳者からいろいろな質問を受けることがあります。さて、出陳者からの質問には丁寧に受け答えすべきでしょうか?その答えは「INTRODUCTION」の最後の方にしっかり書かれています。

「Clerks may answer questions from spectators and novice exhibitors, but at no time can the clerk's performance suffer」

「見学者や経験の浅い出陳者からの質問に答えてもいいですが(あるいは答えることが出来ますが)…」と”条件付き”になっていることに注意しましょう。

その条件部分は日本語に訳しづらい英語ですが、意訳すると「クラークの仕事ぶりに決して影響が出ない限りに於いて」ということになります。

ですから、リングクラークはあくまで、リングクラークとしての”仕事”を優先すべきだということを忘れてはなりません。

★eクラーキングセミナー 第24回★ 2015/4/30
「eクラーキングセミナー」の第24回は「INTRODUCTION」の中で留意しておきたい一文を取り上げます。

それは第一段落の中ほどに出てくる「A good clerk can enhance the performance of a Judge」です。

「enhance」という英単語の意味を知ると、その重要性が明確になることと思います。この単語は、質や能力を「高める」「強める」「強化する」「増進する」という意味があるのです。

「performance」は、モノに対しては「性能」の意味、人に対しては「能力」や「仕事ぶり」を意味しますから、この2つの英単語を知るだけで、この文章の意図するところが分かるかと思います。
ジャッジの足を引っ張るなど論外であり、ジャッジの能力を存分に発揮させ、引き出させ、仕事ぶりを更に素晴らしいものにすることが、真のクラークの使命であるともいえるかと思います。

★eクラーキングセミナー 第23回★ 2015/4/23
「eクラーキングセミナー」の第23回も「INTRODUCTION」からクラークの基本を学びたいと思います。

第二段落の冒頭に出てくる「A clerk must be accurate and neat」はしっかり胸に刻んでおきたい文章です。

特に英語の「accurate」には「正確な」のほかに、「精密な」「間違いのない」という意味も含まれている点は重要です。

さらに「neat」には「きちんと」「整然と」「手際よく」という意味があります。単に「正確な」だけでなく、手際の良さ、要領の良さも求められていることになります。

「write neatly」という英語は、「きれいな字を書く、きれいに書く」という意味ですから、カタログにもきれいに書くことも求められていると言えるでしょう。

★eクラーキングセミナー 第22回★ 2015/4/17
「eクラーキングセミナー」の第22回は「Clerking Manual」の「INTRODUCTION」の締め括りの文章に焦点を当てたいと思います。

こう結ばれています。
「In essence, the Head Ring Clerk's primary responsibility is to serve as the executive assistant to the Judge」

ここで特に注目したいのが「executive」という英語です。
名詞で使う場合は「会社の重役・幹部」「政府高官」の意味で使い、形容詞で使う場合は「重役向けの」といった意味合いを持ちます。一般的に「executive assistant」という場合は「役員補佐」や「重役秘書」を指します。つまり、ヘッドリングクラークは会社で言えば、「役員補佐」や「重役秘書」なのです。

そして、クラークの頂点に立つのが、資格的に言えば「エントリークラーク」です。
「Clerking Manual」の「INTRODUCTION」を読むだけでも、クラークが”メッセンジャーボーイ”や”メールボーイ”などとは段違いの役割を担っていることが理解できるかと思います。

★eクラーキングセミナー 第21回★ 2015/4/13
「eクラーキングセミナー」の第21回も「Clerking Manual」の「INTRODUCTION」を通じて基本を勉強したいと思います。

ヘッドリングクラークはジャッジから手渡されたイエロースリップの下に自らのサインを書き込み、マスタークラークに渡します。このサインは単に「確認しました」という意味なのでしょうか?

「INTRODUCTION」を念入りに読むと、こんな文章があることに気づくでしょう。
「Initialing of a Judge's slip by the Head Ring Clerk is certification of accuracy」

ここで大切なのは「certification of accuracy」です。直訳すれば「正確さの証明」となります。
つまり、ジャッジの審査結果が正しいことを、ヘッドリングクラークが証明した”証”として、ヘッドリングクラークのサインがあるというわけです。

サインする「意味」、その「重み」をしっかり認識しておく必要があります。

★eクラーキングセミナー 第20回★ 2015/4/1
「eクラーキングセミナー」の第20回もクラークとしての基本を続けます。

アクトのブログではたびたび「結果責任を負う」というテーマについて触れてきましたが、クラークにとっても「結果責任」と無縁ではありません。

「Clerking Manual」の「INTRODUCTION」のところを、もう一度、読み返してみましょう。そこにこんな文章があるのに気づくはずです。
「If there are errors in the posted results, they are the clerk's errors, even if the errors originated elsewhere」
日本語に訳すとこうなります。「公表された審査結果に間違いがあれば、たとえ第一義的な原因が他にあったとしても、それらはクラークのミスになります」

まさに、これが「結果責任を負う」ということに他なりません。
リジョンで起きるトラブルの「結果責任」をリジョンディレクターが追わねばならないのと同じように、審査結果の発表で”メカニカル”な間違いがあれば、その「結果責任」はクラークが負うのです。

エントリークラークを含め、クラークは決して”メッセンジャーボーイ”でもなければ、”メールボーイ”でもないのです。

★eクラーキングセミナー 第19回★ 2015/3/26
「eクラーキングセミナー」の第19回は前回の続きです。

人手が足りずクラークが猫出しもする(出陳者でもある)場合、そのクラークは自分が担当するリングなら自分で猫を持って来てもいいのでしょうか?

もちろん、ダメです。「Clerking Manual」でも以下のように定めています。

「53.8 The clerk should avoid bringing his own cat into the ring in which he is clerking. Arrange ahead of time for someone else to show the cat, if at all possible」

日本語訳のニュアンスが難しいのですが、明確に「禁止」しているわけではありません。
「should avoid bringing」となっていますから、忠実に訳すと、「運ぶのを(猫出しを)避けなければならない」と書いてあります。そして、「if at all possible」(可能な限り)、「誰か他の人に猫出ししてもらえるように事前に手配しなさい」となっています。

とは言え、TICAのショーのあり方から言えば、自分がクラークとして入っているリングの場合、誰か他の人に猫出しして貰うべきだと言えます。

★eクラーキングセミナー 第18回★ 2015/3/19
「eクラーキングセミナー」の第18回もクラークとしての基本について考えます。

人手が足りずクラークが猫出しもする(出陳者でもある)場合、クラークはどう振る舞うべきなのでしょうか?
再確認の意味を込めて、「Clerking Manual」に沿って考えたいと思います。
「53.2」には以下のように明記してあります。

「It is advisable to have someone else show your cat(s) for you; but should this not be possible, it is the clerk's responsibility to find a competent replacement to serve as a temporary clerk in his/her absence from the ring. As a last resort, request permission to leave the ring to put your cat in a ring and IMMEDIATELY return to the ring where you are clerking. DO NOT WAIT IN ANOTHER RING TO WATCH YOUR CAT BEING JUDGED」

抄訳すれば、「代わりに猫出ししてくれる人がいることが望ましい。しかし、それが不可能な場合は、クラークが猫出ししている間、クラークを代わってくれる資格を持つ人を探す責任がある。最後の手段として、猫出しのためにリングを離れる許可を貰い、猫を出したらすぐに戻る。決して自分の猫が審査されているのを見ていてはならない」

厳密に「Clerking Manual」に従うなら、自分が猫出しする際に代わってもらうべき人は、クラークの資格を持った人でなかればならない点は頭に入れておいた方がいいでしょう。

★eクラーキングセミナー 第17回★ 2015/3/14
「eクラーキングセミナー」の第17回もクラークとしての基本について考えます。

審査中のクラークの基本動作の中で、特に気を遣わなければならないのが、ジャッジが神経質な猫・ハンドリングしにくい猫を審査している時です。クラークのちょっとした動きで、猫がさらに神経質になったり、急に動いたりしかねません。ですから、「Clerking Manual」でも敢えて、そうした場合の注意点について触れています。

「53.4 If a Judge has a cat that is difficult to handle on the table, DO NOT get up to place numbers on the cage or perform any similar activity which might further upset the cat and/or endanger the Judge. (Make sure that your stewards are informed of this also)

ここで、見落としがちなのが、最後のカッコ書きのところです。
ベテランのスチュアードなら大丈夫でしょうが、経験が浅かったり、初めての場合は、必ずショーが始まる前に、この点を言い含めておかなければなりません。

ジャッジがハンドリングしにくい猫を審査しているにもかかわらず、スチュアードがその後ろでケージを掃除していたりするケースをたまに見かけますが、それはクラークの責任でもあるのです。

★eクラーキングセミナー 第16回★ 2015/3/10
「eクラーキングセミナー」の第16回もクラークとしての基本について触れたいと思います。

よく世間では「鶏が先か卵が先か」などと言いますが、TICAのヘッドリングクラークにとって「Show Rules」は、クラークの経験を重ねながら知識を深めていくものなのでしょうか? それともルールの知識を深めたメンバーがクラークの仕事をするのでしょうか?

もちろん、正解は後者であり、TICAにおいて「鶏が先か卵が先か」というのは愚問です。「Show Rules」が先にあります。しかも、「Clerking Manual」ではこの点について、かなり強い表現を使って記載している点に注意すべきでしょう。

「52.2.3 Be completely familiar with the Clerking Manual, show mechanics, colors, competitive divisions, show protocol and current show rules」

「completely」は「完全に、完璧に」、「familiar with」は「精通している、熟知している」という意味ですから、極めて重く受け止めねばなりません。しかも、その「Show Rules」は、「current Show Rules」である点も見逃してはなりません。

今回は敢えて、「Show Rules」に焦点を当てましたが、「Show Rules」だけでなく、「Clerking Manual」「Show Mechanics」「Colors」「Competitive Divisions」「Show Protocol」についても、完璧に熟知していることが求められています。

ジャッジの”チーフアシスタント”であるということは、ジャッジ並みの知識を備えていなければ務まらないということなのです。

★eクラーキングセミナー 第15回★ 2015/3/4
「eクラーキングセミナー」の第15回は「メカニクス」からちょっと離れ、もう一度、クラークとしての基本に立ち戻りたいと思います。

クラークはジャッジの”チーフアシスタント”としての役目を担い、”チーフアシスタント”としてリング内の様々な事柄に目を配るわけですが、果たしてそれは「リング内」に限られるでしょうか?
「Clerking Manual」を良く読んでいるクラークなら、「そんなことはない」と、パッと分かるかと思います。

確かに、第3条「Ring Protocol」のところには「53.2 The clerk should remain in the ring and leave it only if absolutely necessary. A CLERK'S PLACE IS IN THE RING」と大文字で明記されていますから、「リング内」にだけ目が向きがちです。
しかし、その後に出てくる「53.9」も見落としてはなりません。

そこにはこう書かれています。
「53.9 The clerk should see that there is no commotion in or near the ring which could disrupt the judging or upset the cats in the ring」
「クラークは、リング内あるいはリングの近くで、ジャッジの審査を邪魔したり、リング内にいる猫が興奮したりするような騒ぎが起きないように気を付けなければならない」
クラークの居る場所はリング内であったとしても、その”アンテナ”はリング周辺にまで張り巡らしていなければならないのです。

★eクラーキングセミナー 第14回★ 2015/2/26
「eクラーキングセミナー」の第14回は前回の解答と解説です。

ショールール216.7.2 には以下のように書いてあります。

「Award less than Best of Color, in which case no higher division award may be made than that made in the color class. The judge shall indicate that award place (i.e. second, third, fourth, fifth) in the space provided for awards in his/her judge’s book. No further notation is required」

つまり、ジャッジがベストカラーに相応しい猫がいないと判断した場合には青リボンを付けない場合があるのです。もちろん、付け忘れや付け間違いの可能性もゼロではありませんが、@〜Cのケースもあり得るということを頭に入れておきましょう。

リングクラークのカタログにはリボンが付けられた通りに書き込みます。

★eクラーキングセミナー 第13回★ 2015/2/21
第13回はカラー/ディビジョンクラスのリボンの付け方に関してです。

@同じカラークラスの3頭の猫を審査した際、ジャッジが青リボンを付けず、赤リボン、黄リボン、緑リボンを付けました。これは青リボンの付け間違いでしょうか?

A同じカラークラスの3頭の猫を審査した際、ジャッジが青、赤と付けたものの、3頭目には黄リボンを付けず、緑リボンを付けました。これはジャッジが黄リボンと緑リボンを取り違えたのでしょうか?

B同じカラークラスの3頭の猫を審査した際、ジャッジが青、赤と付けたものの、3頭目にはリボンを付けませんでした。これは単純なジャッジのリボンの付け忘れでしょうか?

C猫がその猫種では1頭しかエントリーされていませんでしたから、当然、カラーリボンは青を付けると思っていたら、緑リボンを付けました。これもジャッジのリボンの付け間違いでしょうか?

上記@〜Cの場合、リングクラークはカタログにはどう書けばいいでしょうか?
解答と解説は次回にしたいと思います。

★eクラーキングセミナー 第12回★ 2015/2/16
前回の解答です。

ジャッジは初めに「トップ10」を選んだわけですから、どの猫種から選ぼうが次点の猫は第11位だったわけです。ですから、3位の猫を差し替えるということは、同じ猫種だからと言って、単純にその順位のところに2nd BOBの猫が入ることはあり得ません。

つまり、4〜10位の猫が全て1つずつ順位が繰り上がった上で、差し替えでファイナルインした猫が10位になります。

ですから、クラークはそれまでの順位を全て書き直した上で、ロゼットを回収し、渡し直さねばならないのです。もちろん、ジャッジブックも4〜10位はすべて書き直しですから、そこにジャッジのサインがひとつひとつ全て書いてあるかもチェックする必要があります。

★eクラーキングセミナー 第11回★ 2015/2/12
前回の続きですが、さて、こんな具体例で考えてみましょう。
ジャッジからファイナルのトップ10を書いた紙を手渡され、ナンバーを立てました。他のリングとの兼ね合いで何頭か入っていなかったものの、時間も押していたために、ファイナルを始めました。ところが、3位の発表のところで、オーナーが帰ってしまって猫がいないことが判明しました。
ショー終了予定時間前。ショーマネに聞いたところ、ショーマネは何も聞いておらず、ショー予定時間前に帰ることを承諾していないということでした。3位の猫はBOBの猫です。同じ猫種の2nd BOBの猫はまだ会場に居たため、差し替えてその猫を3位としました。

さて、クラークとしてすべきことは何でしょうか?答えと解説は次回にしたいと思います。

★eクラーキングセミナー 第10回★ 2015/2/7
「eクラーキングセミナー」の第10回も「ショーメカニクス」の続きです。

なぜ、「メカニクス」が大切なのか?
前回は出陳者が気付くケースを取り上げましたが、必ずしも出陳者が気付くとは限りません。出陳者が気付けば、クラークも「メカニクス」のチェックにミスがあったことに容易に気付けますが、そうでないと最悪の場合、誰も気付かないという事態になりかねないので注意が必要です。

例えば、競合するディビジョンが複数にわたる場合、ジャッジは一般審査の際に敢えてブリードの順位を公表する必要はありません。仮に、出陳者がクラークに確認しなければ、ファイナルで上がったナンバーがBOBの猫でも2nd BOBの猫でも出陳者には分かりません。ジャッジが間違え、クラークも「メカニクス」のチェックミスをしてしまうと、出陳者が気付かないまま間違ったファイナルが行われることになってしまいます。

もちろん、「メカニクス」のチェックはクラークとマスタークラークによる「二重チェック」体制になっていますが、すり抜けてしまうことがあるので注意が必要です。

「メカニクス」とちょっと離れますが、こんなケースも出陳者が気付かない恐れのあるケースです。
例えば、ショー終了予定時間が過ぎたため、ある出陳者が帰ってしまった。ジャッジはオーナーがいないため、ファイナルを差し替えることにします。本来は、ショー終了予定時間を過ぎれば帰っていいわけですから、ファイナルの差し替えをしてはいけません。しかし、このルールをクラークが知らずに差し替えてしまった場合、本来はファイナルに入るべき猫のオーナーは、この差し替えの事実を誰かから聞かされない限り、永遠に知りようがないのです。

こうした事態が起きかねないことも考えれば、自然と「メカニクス」の大切さが分かるかと思います。

★eクラーキングセミナー 第9回★ 2015/2/3
「eクラーキングセミナー」の第8回も「ショーメカニクス」の続きです。
なぜ、「ショーメカニクス」が大切なのでしょうか?

おそらく、クラーク自身がこういう経験をしていれば分かるかと思います。例えば、ファイナルになってナンバーが立ちました。「やった〜! ファイナルに入った〜!」といそいそと猫をファイナルのリングに持って行くと、「間違いでした…。すみません」−−。クラークによる「メカニクス」のミスで、ぬか喜びに終わってしまうケースがあるのです。

こんなケースもあります。 ファイナルになってナンバーが立ちました。
「残念…。我が家の猫は入っていない…」。 しかし、よくよくナンバーを見ると、同じブリードで争った猫のナンバーが立っている。しかも、一般審査で我が家の猫はBOB、ナンバーが立った猫は2nd BOB…。どういうことだろう??
せっかくの楽しかったショーも思わぬ疑問に興ざめ−−。

そうなんです。「メカニクス」とは単にジャッジのミスを見付けるだけではなく、出陳者にいやな気持ちをさせない、出陳者に思わぬ困惑を与えないためにも重要なのです。

ショーの成功はひとえに出陳者全員が楽しくショーを過ごしてもらうこと…。そのためにもクラークが「メカニクス」でミスをして、出陳者を興ざめさせては決してならないのです。

★eクラーキングセミナー 第8回★ 2015/1/30
「eクラーキングセミナー」の第7回は「ショーメカニクス」の続きです。
クラークになろう、あるいは正規の資格を取ろうと何回かクラークをした方々は、先輩クラークに「決してジャッジが手渡したジャッジングシート(イエロースリップ)の内容をカタログに転記してはならない」と教わったかと思います。

なぜなら、単に右から左に書き写しては、ジャッジのミスを見付けられないからです。クラークが自分で実際に目にした事と、ジャッジがジャッジングシートに書いた記録が正しいかどうかを照合することが重要であり、転記したのでは意味がないからです。そのことは「クラーキングマ ニュアル」にも書かれていますが、実は例外があります。さて、それはどんな場合でしょう?

正規の資格を持っているクラークならすぐ分かると思いますが、それはブリードの順位に関してです。同じ猫種でも複数のディヴィジョンの猫がいる場合には、ブリード順位を付ける必要がありますが、必ずしもジャッジはその順位を発表しなくてもいいことになっています。ですから、そういう場合だけは、ジャッジから手渡されたイエロースリップに書かれている順位を転記することになるのです。

★eクラーキングセミナー 第7回★ 2015/1/26
「eクラーキングセミナー」の第7回は「ショーメカニクス」に関してです。
これは、ショーのメカニズムが正確に記録されているかどうかをチェックすることを指します。そのひとつに「キャットカウント」があります。

「キャットカウント」はアワードポイントの計算に必要不可欠であり、1点、2点を争っている場合にはこの「カウント」の差で順位が入れ替わりますから、とても重要です。しかし、ともすると「カウント」をしっかり数えるという重要性が蔑ろになっているようなケースを見かけます。なぜでしょう?おそらく、「カウント」を数えるの はクラークの仕事である、という認識に欠けているからではないでしょうか…。

よくジャッジ自らも「カウント」を数え、クラークの数えた「カウント」と突き合わせている光景をみかけますが、本来、そうする必要はありません。クラークがしっかり数えて、ジャッジに伝えるのが基本です。

クラーキングマニュアル 54.2.5.1にはそのことがしっかり書かれています。
「At the end of each class, the clerk must count the cats present and competing and write this information in the indicated place on the finals pages in the catalog. The clerk must also give the number of cats present and competing to the Judge. The Judge must place this number on his/her finals sheets. This information is essential in determining the number of final awards given」

もちろん、複数の人間で数えれば”ダブルチェック”することになり、間違うリスクは低くなりますから、ジャッジ自らも数えることがありますが、それはあくまで「念の為」に過ぎません。信頼に足るクラークになるためには、ジャッジが「カウント」を数えなくても済むようにならなければならないのです。

★eクラーキングセミナー 第6回★ 2015/1/22
「eクラーキングセミナー」の第6回目は、主にクラークのトレーニーやアシスタントクラークの方々向けに話したいと思います。

おそらく色々なジャッジやヘッドリングクラークの横に付いて学ばれていると思います。そうした中で必ずぶつかるのが、「あの人はこう言ったけれど、別の人は逆のことを言っていた」といった問題です。これは往々にして「クラークとしてどうあるべきか」といった問題と不可分なので、教わる方は困惑しがちになります。

もちろん、「クラーキングマニュアル」に明確に規定されていれば迷うことなどありませんが、そうではない事となると迷いが生じてしまって も仕方がないでしょう。

しかし、解決の糸口がないわけではありません。それは、あなたがそれを教わった際に、「どうしてそうすべきなのですか?」あるいは「どうしてそうすべきではないのですか?」と必ず聞く習慣を付けることなのです。アドバイスや指示には必ず理由があります。そして、その理由こそ大事であり、得てしてアドバイスはある特定の状況に即して言われるケースが多いのです。

クラークはリングの席にどっしり座って仕事をすべきでしょうか?
それとも、席が温まる暇もないほど動き回っているべきでしょうか?

一見、相反する見解ですが、それはケース・バイ・ケースなのです。そして、「そうすべき」「こうすべき」の背後には必ずそれなりの理由があります。その理由をひとつひとつ知り、学ぶことが優秀なクラークになることにつながるのです。

★eクラーキングセミナー 第5回★ 2015/1/17
「eクラーキングセミナー」の第5回目は、「細やかな配慮」の続きです。
私は、「細やかな配慮」をするためには2つの能力が欠かせないと思っています。
1つは「柔軟な対応力」、もう1つは「先を読む能力」です。
当然のことながら、出陳者やジャッジの要望やニーズは多岐にわたります。潜在的な要望まで含めれば、杓子定規に対応していては「細やかに配慮」することなど到底、及ばないことが分かるかと思います。”役所仕事”では務まりません。自分の柔軟性が欠けるが故に起きたトラブルを他人のせい にして、クラークがキレてしまうなど、あってはなりません。

「先を読む能力」はスケジュール変更を巡る他のリングクラークとの調整や交渉では欠かせません。自分のリング、相手のリングの現在の状況だけでなく、進み具合も念頭に置いて調整してこそ、ショー全体が円滑に進むことに貢献できます。一方のクラークだけが「先を読む能力」に長けているだけではうまく回りません。もう一方のクラークも「先を読む能力」に長けていればこそ、「あうん」呼吸で瞬時にスケジュール調整が出来るのです。

★eクラーキングセミナー 第4回★ 2015/1/13
「eクラーキングセミナー」の第4回目は、「クラーキングマニュアル」にははっきりと書かれていませんが、私が大切だと経験上、感じたことをお伝えしたいと思います。

それは「細やかな配慮」ということです。
@猫と出陳者に対する「細やかな配慮」
Aジャッジに対する「細やかな配慮」
Bさらに他のリングクラークに対する「細やかな配慮」も欠かせません。
これらの「配慮」が行き届いてこそ、リングクラークはジャッジを完璧に補佐し、ショーを円滑に運べるのだと思います。

例えば、猫は匂いに敏感です。ですから、リング 台のあるテーブルで昼食をしたり、何かお菓子を置いたりする際は注意が必要で、これも「細やかな配慮」に含まれると思います。

話は変わりますが、世界的な最高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン」では、全従業員 がモットーなどが記された小さな冊子を持っています。その中に、このホテルの従業員が提供するサービス精神について次のような一文があります。
「お客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心」−−。
リングクラークも同じではないでしょうか。
ジャッジの”チーフアシスタント”として、出陳者やジャッジが言葉にしない願望やニーズをも先読みして応えるような細やかな配慮が欠かせないということを頭に入れておきたいものです。

★eクラーキングセミナー 第3回★ 2015/1/9
お話しする優先順位が前後してしまったかもしれません。
リングクラークとして一番大切なことは何か? これについて考えたいと思います。

それは、「ジャッジを補佐し、ショーを円滑に進めること」であり、「ジャッジが審査に集中出来るようにすること」であり、「ショーのメカニズムを確実に理解し、正確に記録すること」です。3つに分かれているようですが、相互に密接に関係している点を見逃してはなりません。

ジャッジによる審査が滞りなく進行する手伝いを完璧にこなせれば、ジャッジの気が散ることもないですし、メカニズムを確実に理解して正確に記録を取っていれば、審査も 滞りなく進行しますし、ジャッジに集中を途切れさせることもありません。リングクラークとして、ショー開催前にしておくべきことは「クラーキングマニュアル」にも載っていますので、まずはそれを復習しましょう。

1. リングクラーク向けカタログを主催クラブ(またはショーコミッティー)から受け取る。
2. エントリー分のナンバーカードが揃っているかを確認する。
3. フラットリボンやロゼットが揃っているかを確認する。
4. ペーパータオル、消毒液、ゴミ袋、イスなどリング回りの準備が整っているかを確認する。
5. ヘッドリングクラークはアシスタントクラークやスチュワ ードと仕事内容を話し合い、不慣れなアシスタントやスチュワードの場合は必要に応じて実演して教える。

しかし、私としては経験上、それだけではないように感じています。
例えば、自分が担当するリングのジャッジが分かっているなら、「ジャッジ台の高さは適切かどうか」もチェックします。
フラットリボンを置く位置はジャッジ台の右に置いた方が ジャッジは審査しやすいか、あるいは左に置いた方が審査しやすいかも確認しておきます。ゴミ袋は設置されているだけでなく、位置が適切かどうかも調べまず。ジャッジによってナンバーの並べ方やタイミングは微妙に好みがありますから、ジャッジが到着したら、その点も聞いておきます。

ショースケジュールはタイトそうか? 余裕がありそうか? あらかじめ分かるようなら把握してジャッジに伝えます。
ヘッドリングクラークの役割として、「クラーキングマニュアル」にはジャッジの「チーフアシスタント」であることと書かれています。そのことを胸に刻むとともに、そのことに誇りを持ってクラ ークをする気持ちが大切でしょう。

★eクラーキングセミナー 第2回★ 2015/1/4
さっそく第1回について、貴重なご意見を頂きました! 元旦スタートにもかかわらずお読み頂いた上に、ご意見を賜り、感謝の気持ちでいっぱいです。今回はその頂いたご意見に沿って、改めてリング内の「安全」とクラークの役割について考えてみたいと思います。

第一のご指摘は「主催クラブ、ショーマネ、クラークなどの役割の違いがはっきり分けられていない」という点でした。つまり、第1回のセミナーで述べた「安全」に関しては、「『ショー主催者』あるいは『ショーマネ』の責任である」というご指摘でした。私も、それには同感です。

猫・出陳者・ジャッジの「安全管理」、そしてショー会場内の「安全管理」は、主催クラブ及びショーコミッティーの極めて重要な仕事だと思っています。ただその一方で、リング内という小さな限られた空間ながら、現場の最前線で仕事をするクラークにとってもリング内の「安全」は重要であることを伝えたいと思った次第です。

主催クラブ、ショーマネが大所高所からマクロ的に「安全管理」を担うのと同時に、クラークがリング内というミクロの細かい視点でも「安全管理」を担うことで、二重のチェック体制が取れるのではないか…との期待も含めました。

第二のご指摘は、「クラークの本来の仕事とは何か?」という点に関してです。

安全管理より、「クラークはもっと違うことに集中しなければならない」とし、「クラークの仕事はショーがスムースに進行することを目的とし、ジャッジをしっかり補佐し、記録を正確に残すことが一番大きな仕事」であるとのご指摘でした。

私はこの点についても、その通りだと思っており、これらについてだけでなく、ロゼットが揃っているかの確認(ショーによってはロゼットを飾ることも含めて)や、カタログのページに乱丁や誤記・誤植がないかどうかのチェック等の重要性についても、この「eセミナー」で順次、取り上げていく予定にしています。

なぜ、私が第一回目で「安全」を取り上げたかというと、ショーが始まった時に、クラークがクラークの本来の仕事に集中する為にも、事前に自分の目で現場をしっかり再確認しておくのが重要だということを経験から学んだからです。

審査の途中でケージの不具合が発覚したり、不安定だったりしたことに気付くなど、気が散る要素を最小限にしておくことでクラークは余裕を持ってジャッジを補佐し、正確に記録を付けられるようになると思ったのです。

備えあれば憂いなし−−。

個人差があるかもしれませんが、私の場合はリング内の「安全管理」という”備え”をしてこそ、審査中にクラークの本来業務に集中できると考えた次第です。

TICAの看板に恥ずかしくない素晴らしいショーを開くという目標に向けて、今後も多くのメンバーの方々のご意見やご指摘を頂ければ幸いです。

★eクラーキングセミナー 第1回★ 2015/1/1
さて、第1回はリングクラークとして一番大切なことは何かということです。
みなさんが会場に入り、クラークとして自分が担当するリングに行った時、まず何を念頭において何をすべきでしょうか? もしかすると、優先順位はクラークそれぞれかもしれませんが、私が強調したいのは「安全」です。

「安全」と言っても、それは3つに分かれます。

第1は猫の安全です。
審査ケージは適正かつ安定性を持って並んでいるでしょうか?
傾いたり、テーブルから落ちたりする危険性はないでしょうか?
審査ケージは壊れていたりしないでしょうか?
中に入れた猫が怪我をする危険はないでしょうか?
自分の担当するリングから会場内を見回し、もし審査中に猫が逃げた場合どう対応すればいいか、具体的に思い描くことができるでしょうか?

第2は出陳者の「安全」です。
審査ケージ、審査台の間隔は適正でしょうか?
審査台と出陳者のベンチングエリアまでの間隔は適正でしょうか?
出陳者がリング内を猫を持って歩くにあたって、つまづいたり、ぶつかったりしないようになっているでしょうか?

第3はジャッジの「安全」です。
ジャッジが審査しやすいような適正な空間を確保してあるでしょうか?
ジャッジが怪我をして応急処置が必要な場合はどこに救急セットが置いてあり、ショーコミッティーの中で誰が適切かつ迅速に対応できるか確認したでしょうか?

もし、「安全」に少しでも不安があるなら、審査が始まる前ショーマネジャーをはじめとするショーコミッティーのメンバーと相談しましょう。今、クラークの勉強をされている方、これから勉強しようとする方は「安全意識」をしっかり身に付けて頂ければと思います。

※「eクラーキングセミナー」ではみなさんのご意見やご感想を受け付けています。こんな点も重要だとか、こんな視点も欠かせないなどのご意見があれば是非ご連絡下さい。積極的に取り上げていきたいと思っています。